禁煙サポートについて

 2006年4月より禁煙治療が保険適用されることになりました。これは禁煙を単なる習慣や嗜好と考えるので
はなく、ニコチン依存症という病気としてとらえ、必要な治療を行うという考え方です。治療は一定の条件を
満たした喫煙者なら、どなたでも受けることができます。
 当院では2006年7月より保険診療での標準禁煙プログラムを開始しています。多くの方が治療によって
卒煙されています。

禁煙治療について

 喫煙習慣は実はニコチン依存症だといわれています。このため、禁煙の際には本人の意思だけで長期間
の禁煙ができる喫煙者はごくわずかです。そこで、禁煙補助剤を使用することでニコチンの離脱時の症状を
軽減して、より楽に禁煙を行うことが可能になります。
 現在、日本で発売されている禁煙補助剤はニコチンパッチ剤とニコチンガム、さらに2008年5月からは経口
禁煙補助剤のバレニクリンが発売され3種類となりました。このうち、保険適応となるのはニコチンパッチ剤と
バレニクリンです。
通常12週間にわたりニコチンパッチ剤もしくはバレニクリンを使用して禁煙サポートを行っております。

 この禁煙治療は、あくまでも禁煙の補助療法という位置づけになります。禁煙しようという本人の気持ちが一番大切になります。バレニクリンについては喫煙による満足感の抑制がありますので、タバコが吸いたくなくなるという効果はあるのですが、それでも禁煙したいという気持ちがないと成功する可能性は低くなります。
禁煙したいけど自信がない、これまで自分で禁煙したけどうまく行かなかったという人に対しては、非常に効果が高いと思われます。

保険医療の適応となる方について

保険適応の対象となる方は、
1)直ちに禁煙することを希望している方
2)一日の喫煙本数に喫煙年数を乗じて得た数が200以上である方
 【35歳未満の方は除く】
3)ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で、ニコチン依存症と診断された方
4)禁煙治療について説明を受け、文書により同意している方です。
これ以外の方は残念ながら保険適応となりませんので、自費での治療となります。

治療法について

受診時期
治療内容
治療前の問診・診察 禁煙治療のための条件の確認、禁煙宣言書の同意
初回診療 @ABC @診察
A呼気一酸化炭素濃度の測定
B禁煙実行、継続に向けてのアドバイス
Cニコチン製剤の処方
D終了証交付
再診1(2週後) @ABC
再診2(4週後) @ABC
再診3(8週後) @AB
再診4(12週後) @ABD

使用薬剤について

 禁煙治療には禁煙補助薬であるニコチンパッチもしくはバレニクリンを使用いたします。

ニコチンパッチ(ニコチネルTTS)について

 ニコチンを皮膚から吸収させる貼り薬で、1日1枚皮膚に貼りニコチンの離脱症状を抑制することで禁煙の
補助剤として効果を発揮します。この薬を使うと禁煙の成功率が約2倍高まるといわれています。
禁煙開始日から使用し8週間の使用期間を目安に貼り薬のサイズを大きいものから小さいものに3段階に切り替えて使用します。
不安定狭心症や重篤な不整脈の方、妊婦、授乳婦などでは使用禁忌となっています。
また副作用として皮膚の発赤やかゆみ、不眠などがあります。この場合貼る場所を毎日変えたりステロイドの
外用剤の使用、不眠の場合は起床時の張替えや就寝前にはがすなどの対応をおこないます。それでもうまく
行かない方はバレニクリンの使用がすすめられます。

バレニクリン(チャンピックス)について

 ニコチンを含まない飲み薬で、禁煙時の離脱症状だけでなく、喫煙による満足感も抑制するため、禁煙の成功率が約3倍高まるといわれています。禁煙を開始する1週間前から内服を開始して、12週間服用します。
使用禁忌は本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方になっており、妊婦や授乳婦、腎機能障害や血液透析患者には慎重投与が必要とされています。副作用は嘔気、便秘、頭痛、異夢(いつもと違った夢)、不眠などがありますが、国内臨床試験ではいずれも軽度だったとのことです。海外ではバレニクリンを使用して禁煙を試みた際に、因果関係は明らかではありませんが、抑うつ気分、不安、焦燥、興奮、自殺念慮及び自殺が報告されているため、投与時に患者さんの精神状態を充分に観察する必要があるようです。
2011年7月に添付文書の改訂があり、自動車など危険を伴う機械の操作などを避けることとなりました。自動車運転中に意識消失などをきたして、事故を起こした方がおられるようです。


タバコスクリーニングテスト
設問内容

はい1点

いいえ0点

問1自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか。

   
問2禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか。    

問3禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコが欲しくて欲しくてたまらなくなることが
ありましたか。

   

問4禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか。
(イライラ、神経質、落ち着かない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、
脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加)

   

問5問4でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか。

   
問6重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか。    

問7タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。

   

問8タバコのために自分に精神的問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。

   
問9自分はタバコに依存していると感じることがありましたか。    

問10タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか。

   
TDSスコア(0~10点)
※5点以上でニコチン依存症
     点

標準禁煙プログラム(保険適用)

初回診療
(禁煙準備)

@禁煙状況、禁煙の意思、既往歴、家族背景と協力者などを伺います。
ATDSテストで、ニコチン依存度のチェックをします。
B保険適応の評価をします。
C一酸化炭素呼気濃度を測定し、有毒ガスの程度を調べます。
D禁煙開始日を決めます。
Eニコチン補助剤(ニコチネル)の使い方を説明します。
F「禁煙宣言書」にサインし、禁煙開始と3ヶ月間の禁煙継続、今後4回の来院を約束します。
再診1
(2週目)
禁煙状況と一酸化炭素呼気濃度を確認し、カウンセリングとアドバイスを行います。
禁煙補助剤のステップアップが可能かどうか検討します。
再診2
(4週目)
禁煙状況と一酸化炭素呼気濃度を確認し、禁煙補助剤のステップアップが可能かどうか
検討します。
再診3
(8週目)
禁煙状況と一酸化炭素呼気濃度を確認し、禁煙補助剤のステップアップもしくは終了が
可能かどうか検討します。
再診4
(12週目)
禁煙開始から3ヶ月後、禁煙外来の卒業を検討します。今後生涯の禁煙を誓い、
終了証をお渡しします。おめでとうございます。
※禁煙補助薬としてバレニクリンを使用する場合、薬価収載から1年間(2009年4月末)までは1回2週間分を限度とする投薬期間制限が
適用されるため、6週後及び10週後の受診が必要になります。
自費診療になる場合
・ TDSテストでニコチン依存症と認められないとき
・ ブリンクマン指数<1日の本数×喫煙年数>が200未満の場合
・ 上記のプログラムどおり、5回の来院が約束できない場合
・ 保険診療で禁煙治療を開始したが、1年以内に再初診した場合、などです。

 

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